ARTISTS' FAIR KYOTO 2026 アーティストによるアーティストのためのフェア

はじめに.
京都府、京都新聞、ARTISTS' FAIR KYOTO実行委員会の主催によるARTISTS' FAIR KYOTO 2026(以下、AFK)が開幕した。第9回目となる今年は、アドバイザリーボードによる推薦と公募を合わせ、40組の若手作家が京都国立博物館 明治古都館に集まる。また、第一線で活躍するディレクター、アドバイザリーボード、過去のAFKに参加したアーティストによる展覧会が、臨済宗大本山 東福寺で開催される。
AFKの特徴は、若手作家が世界に羽ばたくきっかけづくりを目指していることと、来場者とアーティストが直接対話し、作品に対する理解を深める機会を提供していることだ。この特徴により、AFKは来場者に能動的な鑑賞を提供し、その延長として作品購入を体験する場となる。

また、AFKのディレクター等によるトークプログラムや小中高生向けのワークショップも開催されるなど、フェア以外のプログラムも盛りだくさん。さらに、京都市内にあるサテライト会場を回遊することで、街歩きを楽しむこともできる。十人十色の楽しみ方ができるAFK。ゆっくりと時間をかけて満喫してほしい。前置きが長くなったが、それぞれの会場で気になった作品を数点ずつ紹介しよう。
京都国立博物館 明治古都館
中西凜
中西は立体と映像とドローイングを展示している。普段の中西の作品には、素材としてチョコレートが使われる。チョコレートで作られた羊やハトを来場者で分け合い、食べることが中西の作品の鑑賞方法だ。(ただし、今回の立体は石膏なので食べられない)
食べ物を分け合う行為を含めたパフォーマンス作品であり、購入した作品を食べてしまえば、保管場所に困らないという、いろいろと驚かされる作品だ。
ちなみに、中西は今回のAFKのアートアワードで最優秀賞を受賞した期待の作家だ。


見島澪佳
現代美術家の見島は、日常で出会う人物の表情や雰囲気からインスピレーションを得て制作をする。最近は「軽さ」をテーマにして、人物が持つ軽やかさや空気感を表現している。その作品は、絵の具に加え、ラインストーンや柄布などの素材を使うことで、視覚的に華やかさや動きを感じさせる。
「ペラペラ人間」というタイトルは、飄々とした人物の軽さに魅力を感じた見島が、その軽やかさがしがらみや重さを超える強さになると思い、命名した。これからも、自由で軽やかで力強い人物像を追求し、多様な素材や表現方法で新しい作品を生み出していくそうだ。

矢部もなみ
矢部は大型の木彫作品を展示している。抽象的な造形は、何かの形をなぞるのではなく、時間の流れを意識したものだそうだ。現在から未来に向け、さまざまに変化し、枝分かれしていく時間の流れ、可能性のようなものが表現されているらしい。
今回、矢部による即興的なパフォーマンスを見た。その様子を見ていると、矢部が作品に絡みつき、離れ、別の作品に絡みつき、また離れる様子が、大きな木材を削るときに飛び散る木端のように思われた。偶然、作品のくぼみと作家の身体のサイズはぴったりだ。

伊地知七絵
伊地知の作品は、モノトーンで描かれた戦闘機のシルエットが目を惹く。その下には、黒色や灰色に塗り込められたパネルが配置されている。遠目で見ると分かりにくいが、パネルには刺繍で文字が書かれている。筆と絵の具で描くよりも時間をかけて表現された言葉。それは、伊地知の出身地、沖縄で起きた米軍による事件の記録だ。声高に主張するわけではないが、事件を忘れないという作家の気持ちを雄弁に物語っているように思われた。

臨済宗大本山 東福寺
ヤノベケンジ
今回のAFKの展示で、最も目を引く作品の一つがヤノベによる《宇宙猫涅槃像 SHIP CAT (Nirvana)》だろう。アートユニットYottaによる《花子》と一緒に会場に並ぶ様子は、まさにAFKを見に来たことを実感させる。さらに、《宇宙猫涅槃像 SHIP CAT (Nirvana)》は、丸窓から中を見るだけでなく、横腹のあたりから中に入ることができる。人気なので、希望者が行列になっているが、おすすめ。なお、隣の子猫はヤノベの作品ではない。しかし、可愛らしいポーズをとってくれる。

黒川岳
境内の奥の竹林の中に、とても気持ちの良い空間が開かれている。奥の方に竹製の小屋の骨組みがあり、作品らしいものは、その小屋だけだが、広場の中央で空を見上げてほしい。そして、竹林に囲まれた、この心地良さを存分に味わってほしい。全ての来場者にとって、素敵な時間になると思う。
注意点として、藪の中を歩いたり、竹の切り株があちこちにあるので、歩きやすい履物で出かけよう。

その他に、リリアナ・グスマン、品川亮、本岡景太の展示も興味深かった。リリアナは、色違いのお面で自我の変化を表現し、品川は縁側から庭に絵画を撒き散らし、本岡は彫刻と絵画の合成を試みている。

おわりに
今年のAFKでは作品を容易に見せない工夫をする作家がいて、そのアプローチが興味深かった。おそらく平面と思われる作品を細く折り曲げ結んだ作品や、卵の形の陶磁器の容器の中に収められた作品など。
結びを解き、容器を割るのは、その作品を手元に置く人々だけの行為だ。このような作品は、展覧会と異なるAFKの在り方を再認識させてくれる。AFKは、来場者とアーティストの対話の場であり、作品の販売と購入の場であることを。会期は短いが、ぜひ足を運んではどうだろう。
展覧会名 ARTISTS' FAIR KYOTO 2026
会期
メイン会場:京都国立博物館 明治古都館:2026年2月21日(土)~2月23日(月・祝)
AFK Resonance Exhibition会場:臨済宗大本山 東福寺:2026年2月21日(土)~3月1日(日)