東京国立博物館・平成館:日光の彩色と金工/社寺建築の美しさの謎を解く
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- by Pulchritudo-diary
世界遺産「日光の社寺」を彩る装飾技術—絢爛豪華な美の裏に潜む、職人たちの技術と精神の軌跡の展示。社寺の建築は、17世紀の日本が誇る芸術の極み。その輝きは、ただ豪華なだけではない。黒漆の深みが空間に静けさを与え、金箔の光が神聖さを際立たせる。黒と金——沈黙と祝祭が交差する色彩の世界は、心を静かに揺さぶる。
「伝統建築工匠の技」のうち、「彩色」と「金工」に焦点が当てられた展示であった。金箔は、わずか1万分の1ミリの薄さにまで延ばされ、光を受けて微細に揺らめく。その製法は、火と水、紙と竹、そして人の感覚が織りなす繊細な工程の連なり。一枚の金が、空間に永遠の光をもたらすものだと知った。そして漆は、単なる塗料ではなかった。木を守り、色を沈め、光を導く。黒漆の深みは、まるで夜の静けさの中に灯る光のように、金の輝きを際立たせる。
しかし、その技術の継承は容易ではない。材料の確保、工程の複雑さ、そして何より、感覚の伝達の難しさ。技術は言葉ではなく、経験の中で育まれるもの。継承とは、技を受け継ぐだけでなく、精神を受け止めることなのだと、投影ビデオは物語っていた。こうした技術を文化として支援し、守り続ける体制の必要性も感じた。匠の技は、個人の努力だけではなく、社会全体の理解と支援によって未来へとつながる。美しさの裏には、静かな努力と、支える仕組みが不可欠なのだと。
日光の社寺が放つ光は、匠たちの誇りと祈りの結晶。その輝きが、これからも失われることなく、未来へと受け継がれていくことを願ってやまない。 そして同時に、観光産業の発展が進む中でも、社寺が本来持つ精神的・宗教的な役割が損なわれることなく、大切に守られていってほしい—そんな思いを重ねて感じた。