4.0
超大判のアールヌーヴォー・ポスター 華やかで迫力満点
会期開始して間もない週末午後に訪問、多くの観客で盛況でした。
「ふたつの世界」との本展タイトルは、華やかなアール・ヌーヴォーのポスター版画と重厚な油彩画の両者を意識したもの。その他、下絵、デッサンも多数出展されてます。
油彩画では、象徴主義的な作品が数点ある。が、油彩画の中心は、画業の後期、故郷のチェコ、スラブの民族・文化を讃える大作を制作し、それらが日本で所蔵され、出展されているもの。立派な作品ではある。
実は、下絵・デッサンが秀逸で良い。ミュンヘン、パリで勉強し、若き日には挿絵画家として力量発揮した所以です。太い線・細い線の流麗な使いかた、構成、更には装飾的モチーフのデザイン、等々、緻密でしっかりとした作業が確認できます。
やはり、真骨頂は大判のリトグラフ・ポスター。これぞミュシャ、の世界だ。
タテ2m近い超大判物は迫力満点。
《ジョブ》《モエ・シャンドン・インペリアル・クレマン》《モナコ・モンテカルロ》辺り、は素直にカッコいいと思う。
「四季」や「宝石」を主題にした四枚連作モノが何組か出展され、見応えたっぷり。中でも「四つの星」は堺所蔵の習作とOGATA所蔵の完成作が並べて展示されている。習作の醸す絵画的情緒・写実要素が、完成作では装飾美に変換される、その比較ができて面白い。
国内の所蔵作品だけでこの規模・クオリティの展覧会が開催できるのも、ミュシャの特筆されるところでしょう。カメラのドイのお二方、土井君雄氏の堺ミュシャ館と尾形寿行氏のOGATAコレクション、それにサントリーによる中之島美術館寄託品とインテックによる富山県美術館寄託品が集結した結果です。西洋的美麗への憧憬・蒐集意欲で何人も虜になった、すごいことです。
(コスト高の昨今は、国内完結の西洋作家展としてミュシャに触れる機会が増している気がします。飽きがこないと良いな、が杞憂でありますように。)