4.0
稼ぐ絵、描きたい絵、の二刀流
尾竹三兄弟、知りませんでした。
画力の高い人は色んな絵が描ける、とあらためて感じました。
三兄弟ともに展覧会の申し子として活躍したものの、岡倉天心との対立や画壇での毀誉褒貶に晒され地位が落ちたと説明されてます。中央画壇での評価・成果は収入に直結するので、展覧会向けの制作では全力投球の画力発揮、調和豊かに流麗と美しく、共感性得られるテーマを選定してます。これが、稼ぐ絵の取り組み。会社の役員室や高級旅館のロビーでお目にかかりたいもの(つまり、買う)。
一方で、描きたい絵の取り組みも。竹坡を中心に、日本画の既往の範疇を超えるチャレンジ、西洋画的でもあり近現代抽象画的でもあり。こんな気概・気質・志向がゆえに中央画壇の権威勢からの信任は高くなかったのかも。しかし、こちらの描きたい絵ジャンルの作品に、より惹きつけられるものを感じました。当時としてはかなりアヴァンギャルドだったでしょうし、魂がこもっていて観る側も愉しい。これは、プライベートギャラリーでゆったりと見たいもの(つまり、買わない)。
日頃より語られることの少ない作家を正面から採り上げる企画展は大好きです。個人蔵も含めて幅広く作品を集めていて、実に立派な展覧会でした。