この展覧会についてABOUT THIS EXHIBITION

岸田劉生は、生涯渡欧することなく日本にあって、独自に西洋絵画を受容し、大正期に独特の写実で強烈な個性を発揮した洋画家です。しかし、しだいに対象の内面に潜む美を表現するようになったことでも知られています。

1908(明治41)年に白馬会葵橋洋画研究所に入り黒田清輝の指導を受けていた劉生は、1911(明治44)年頃ゴッホやセザンヌといったポスト印象派からの影響が強く表れた作品を手がけますが、やがてデューラーやヤン・ファン・アイクといった北方ルネサンスの画家からの影響が顕著な肖像画の数々を描きはじめます。

ゴッホに見られるような荒いタッチと色彩豊かな色遣い、セザンヌに見られるような幾何学的な形態把握から、細部まで描き込まれた細密な表現に移り変わる中で、「写実」を通して描く対象の本質を捉えることについて考えを新たにしました。

劉生は、晩年に向かうにつれて日本画を描くなど、独自の道を極めていきました。劉生の「麗子」を描いた日本画は、油彩画の「麗子」に比べると、まるで別の人物であるかのようにデフォルメされたものとなり、どこか文人画を思わせます。

この頃、宋元画を称賛するようになった劉生は、「写実」とは、単に見たものをそっくりに描くことではなく、対象の持つ本質や意味を写し取ること、すなわち「写意」であると見なし、宋元画の単純化された線と影のない描写にこそ真実があると考えるようになりました。

また、それらは、平面性と稚拙な表現を併せ持つことで、現実感が薄れているところにより深い魅力を秘めると述べています。このように東洋画の中に劉生が見いだしたのは、西洋的な「写実」を越えた東洋的な「写意」だったと言えます。

本展では、笠間日動美術館のコレクションを中心に、劉生の絵画、版画、さらには装丁画などを紹介することによって、当初の西洋美術の受容による「写実」から、後半生に独特の展開を見せた日本画や東洋的な装丁の「写意」への帰結までの全画業を展望します。さらに、岐阜県美術館新収蔵の貴重な初期の油彩画等のお披露目とともに、岐阜と劉生の関係を紹介します。

開催概要EVENT DETAILS

会期	2020年11月14日(土)～2021年1月17日(日) ※会期中、展示替えがございます
会場	岐阜県美術館 Google Map
住所	岐阜県岐阜市宇佐4-1-22 [公式アクセスMAP]
時間	10:00～18:00 （最終入場時間 17:30） ※企画展開催中の第3金曜日は20:00まで開館
休館日	月曜日　 ※祝日の場合は翌平日 ※年末年始 12月28日（月）～2021年1月4日（月）
観覧料	一般 800円(700円) 大学生 600円(500円) 高校生以下 無料 ※（　）内は20名以上の団体料金 ※身体障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳、難病に関する医療受給者証の交付を受けている方およびその付き添いの方（1名まで）は無料
TEL	058-271-1313
URL	https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/