この展覧会についてABOUT THIS EXHIBITION

江戸時代の博多の夏の祭礼の主役といえば、勇壮で優美な山笠でしょう。この展示では、福岡市博物館が収蔵している黒田資料などから、多彩な飾りを施され優美で女性的な堂山（どうやま）とよばれる山笠図を集めて展示します。

また堂山にちなんで、祭礼や名所、生業や生活、芸能や伝承といった視点から、当時の福岡や博多の町方（まちかた）に生きた女性たちの姿を紹介します。

◆ 近世前期の山笠と堂山の始まり
江戸時代も始まって100年近くたち、天下泰平の世となった元禄時代、福岡藩3代藩主黒田光之（くろだみつゆき）に仕えていた有名な儒学者・貝原益軒（かいばらえきけん）は『筑前国続風土記（ちくぜんのくにぞくふどき）』のなかで、博多山笠は、九州各地からの見物客でごったがえしたと、記述しています。

また益軒はこの時代の山笠は天辺（てっぺん）に城壁を造り、幾本もの旗で山を飾り人形に甲冑を着せ、武器を持たせる旗指の山が中心だったとも記述しています。

その数年後、4代藩主黒田綱政（つなまさ）の時代となった宝永5（1708）年、藩の命令により、6本の山笠のうち、1、3、5の奇数番は旗指山（はたさしやま）（「修羅（しゅら）もの」）、2、4、6番の偶数番は堂山といわれる山を作るようになりました。

堂山は、御殿やお屋敷の造り物が天辺にある山で、「蔓（かずら）もの」とも言われ、伝承や物語に登場する女性を主人公にするため、「かつら」をつけた人形で飾られました。優美な山はそれまでも作られましたが、以後は毎年3本も見ることができるようになりました。

堂山が登場する時代背景には、三都（江戸、京、大坂）はもちろん大きな城下町や博多などの都市で、本や人形浄瑠璃（にんぎょうじょうるり）、歌舞伎を通じて、日本の神話や古典、能などの芸能、和漢の歴史と文芸が、庶民にも広まったことがあります。

◆ 華麗・優美な幕末の堂山
福岡市博物館の黒田家伝来の資料（黒田資料）の中には、嘉永7（安政元、1854）年以後、山笠制作の許可を受けるために、博多から町奉行所に提出された山笠絵図が残されています。それらを見ると合戦や武勇伝の世界に限られがちな旛指山とは異なり、堂山の題材は和漢の歴史や文芸、伝承から、さまざまな内容に及んでいます。

基本的な舞台である御殿やお屋敷を背景として女性が登場するものには、日本神話から天照皇大神などの女神、また古典や能からは女性歌人が和歌の不思議な力により主人公を助け、勇気づけるといった話などがあります。

合戦譚や軍記物からは、中国の三国志などで劉備夫人と御殿などを守る武将関羽の話や、お釈迦様の誕生をめぐる父王と母夫人の話などがあり、また日本の古典からは源平の世で戦を逃れた常盤御前と3人の幼い子たちの話も取り上げられ、また出世した武将の少年期の逸話なども好まれました。たとえば羽柴秀吉の甥にあたる加藤虎之介（後の清正（きよまさ））の、秀吉への初お目通りの話などがあります。

幕末の堂山では、主人公として女性が取り上げられても、男性や子供を助けたり、力づけたりするための役割が強調されているようです。

開催概要EVENT DETAILS

会期	2019年6月11日(火)～2019年8月4日(日)
会場	福岡市博物館 Google Map
展示室	福岡市博物館　企画展示室4
住所	福岡県福岡市早良区百道浜3丁目1-1 [公式アクセスMAP]
時間	9:30～17:30 （最終入場時間 17:00） ※7/20～会期終了までの金・土・日は20:00まで開館時間延長（入館は19:30まで）
休館日	月曜日　 ※月曜が祝休日にあたる場合は翌平日
観覧料	一般　200円（150円） 高・大生　150（100円） 中学生以下 無料 ※中学生以下無料 ※（　）内は20人以上の団体の料金 ※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳（以上の手帳を提示された方の介護者1人を含む）及び、特定疾患医療受給者証・特定医療費（指定難病）受給者証・先天性血液凝固因子障害等医療受給者証・小児慢性特定疾病医療受給者証、福岡市・北九州市・熊本市・鹿児島市民でシルバー手帳など65歳以上が確認できるものをご提示の場合は無料。
TEL	092-845-5011
URL	http://museum.city.fukuoka.jp/