この展覧会についてABOUT THIS EXHIBITION
この上なく軽やかに壁に留まるレリーフ。小さなその一つの塊は、しかし建物のように豊かな空間をもち、また見る度に私たちの脳裏に異なる複数の姿を現す。
造形作家、岡﨑乾二郎(1955年~)は、初個展「たてもののきもち」でレリーフ〈あかさかみつけ〉シリーズを発表して以来、彫刻、絵画、映像、メディア・アート、建築からテキスタイル作品、舞台美術、絵本、タイル、描画ロボットによるドローイングまで、あらゆるジャンルにおいて最前線で制作を続けてきました。さらに稀有なのは、灰塚アースワークプロジェクトにおける長期的な修景保存活動や四谷アート・ステュディウムにおける教育活動、展覧会のキュレーションや多分野にまたがる批評など、岡﨑が造形活動に劣らぬ熱量をもって、個の領分を超えた旺盛な活動を展開してきたことです。それが、およそ一人の人間の行い得る範囲を超えた広がりと知性に支えられた深さをもっているのは、個々の作品のみではなく、それらの作品が生みだされる場所までをも岡﨑が形成、造形しようとしてきたがゆえと言えるかもしれません。
岡﨑は、この世界は決して一元的なものではなく、たがいに相容れない固有性をもったばらばらな複数の世界から成ると言います。そして、それらが一つに融合されることなく、それぞれの個性を保ったまま交通することが可能となる、どこにもない場所が成り立つとき、豊かな創造性が生まれるのだという考えを堅持してきました。表現が何かを代表してしまうことを疑い、抵抗し、もっと周縁的なもの、小さなものが持つ可能性を尊重すること。岡﨑の活動が一つに留まることなく、つねに多くの人や事物とネットワークを結び、拡げてきたのは、こうした複数世界についての確信の現れだと言えます。
豊田市美術館では、2017 年に、岡﨑乾二郎の企画監修による展覧会「抽象の力」を開催しました。その展示は、抽象芸術が本来もっていた現実的で具体的な力を明らかにし、一元的なモダニズムの美術史観を軽やかに翻すものとして、多くの刺激と新たな知見を私たちにもたらしました。その次なる試みとして、岡﨑自身の作品とその活動の全貌をご紹介する個展を開催いたします。
見ることには、つねに回想することが含まれています。岡﨑の作品を見るたびに、私たちのいる空間の階層は次々と入れ変わり、過去、未来そして現在という時間の階層もまた、のぼったりおりたりするように改められていきます。過去に遡ってその仕事を回顧するのではなく、作品を前に回想することで、私たちの感覚が絶えず刷新されていく。この不思議で豊かな体験を、是非、豊田市美術館の空間で実感していただきたいと思います。
開催概要EVENT DETAILS
会期 |
2019年11月23日(土・祝)〜2020年2月24日(月・振)
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会場 |
豊田市美術館
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住所 | 愛知県豊田市小坂本町8-5-1 |
時間 | 10:00〜17:30 (最終入場時間 17:00) |
休館日 |
月曜日 12月28日(土)~1月4日(土) ※ただし1月13日(月・祝)、2月24日(月・祝)は開館 |
観覧料 | 一般 1,300円(1,100円) 高大生 900円(800円) 中学生以下 無料
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TEL | 0565-34-6610 |
URL | https://www.museum.toyota.aichi.jp/ |
豊田市美術館の情報はこちらMUSEUM INFORMATION
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出展作品・関連画像IMAGES

《あかさかみつけ》 1981 年 アクリル、ポリエチレン 高松市美術館蔵

《まだ早いが遅くなる》 1986 年 綿布、絹 大原美術館蔵

《テウミンとたみをとむらって バツサイとつみをきりしは》2000 年 セラミック 東京国立近代美術館蔵

左から 《出来/ルーテルの食卓》《河内(ハノイ)/地球上ではじめての聲》《瑠璃/西方の溌剌》《戸口/雑巾と棕櫚の靴拭い》
2015 年 アクリル、カンヴァス 作家蔵

《ポンチ絵》 2014 年 色鉛筆、紙 個人蔵

《タメになるってどういう意味?/狐の才気》2018 年 アクリル、カンヴァス BBar collection

《Physiognomy》 2016 年 インク、紙 株式会社タグチプロジェクツ蔵