4.0
「目と目と目」 クワトロラガッツイ展を観て
四人の少年使節が視た「夢」の都を、杉本博司の目(作品)を介して観者である私達が追体験出来るという企画に大いなる期待を寄せていたのであったが…
のっけから杉本作品の滑らかな階調美や揺るぎない存在感に圧倒された私は、彼の世界に取り込まれてしまい、その他の展示物を観る目を取り戻すのに苦労してしまった。杉本が仕掛けたマジックが強力過ぎて、それを醒ますのに時間を要したという意味である。結果、今回展は杉本の作品披露空間という印象が強かったというのが正直な感想である。因みに、杉本作品に接するのは今回が初めて。
各史料・殉教図類は、「夢」が「まぼろし」と終わってしまった時代の悲劇を如実に物語るに十分であったし、数奇な運命に翻弄された少年たちの苦悩をなぞり返す事の出来る貴重な展覧であったのは勿論である。
少年たちの肖像画を観ながら思った事。
『私はローマを見た中浦ジュリアンである』
夢と誇りを殉教の間際まで捨てなかったジュリアン。かたや、棄教した千々石ミゲル。
ミゲルが棄教した理由は諸説あるが(その一つを信じるとして)、彼が最もキリスト教国の暗部、そして、イエズス会の野望(一方的な「夢」の構築)を見抜く目を持っていたのかも知れない…と。