この展覧会についてABOUT THIS EXHIBITION
本展はアメリカを代表する作家、ハワード・ベン・トレの日本初の個展です。
1949年ニューヨーク州ブルックリンで生まれたベン・トレは、1970年代、人種問題、女性の地位向上、所得格差といった社会問題に取り組み、政治活動に傾倒していましたが、その後、ポートランド州立大学(アメリカオレゴン州)での吹きガラス、またピルチャック・グラススクールでのキャストガラスとそれぞれ出会ったことを契機に、作品制作を開始します。以降一貫して、ガラス素材の特徴を最大限に引き出す彫刻作品を生み出し、現在まで国際的に評価されてきています。
彫刻を学び、ガラスによる制作活動を開始した直後の1980年代、ベン・トレは古代の儀礼的な遺物や歴史的建造物のかたちから着想を得ていましたが、やがて大量生産工場で用いられている工業部品や、それらと歴史的建造物との類似点にも着目するようになりました。また、古代建築や遺物がもつ神聖的、神秘的な世界像も参照し、作品にダイレクトに反映してきました。1990年代前後より制作された「Basin (水盤)」、「Primary Vessel (原初の器)」、「Wrapped Form (包まれたかたち)」は、特にインドネシア、カンボジア、中国、日本といったアジアの儀礼的な遺物や風習を映し出した作品群です。
こうしたテーマの下、ベン・トレの作品は、スケッチ、等身大でのドローイング、発砲スチロールによる原型制作というプロセスを踏まえ、「キャスト(鋳造)」の方法によって、熱したガラスが原型に注がれた後、一定以上の冷却期間を経てかたちづくられます。特に原型への注入と冷却は、ベン・トレ作品の特異なサイズや質感を決定づける重要なプロセスであり、作家は長年の経験と試行錯誤を経て培ってきました。ベン・トレは自身の制作プロセスについて、精神と意思の自由が肯定される時空間であると述べています。
すなわち、「キャスト」を中心に展開される長い制作プロセスは、単に作家の技術的な試行錯誤や実験の場であるのみならず、ベン・トレが古代遺物を手がかりに探求し続けてきた人間の精神性や思想・思考が重層的に連鎖する時空をも内包しています。だからこそベン・トレの彫刻作品は、欧米中心主義、ユダヤ・キリスト教主義、科学万能主義が盲目的に受容され続ける現代社会を生き抜く我々に、自己の在り方や現代の精神性を見つめなおさせます。
開催概要EVENT DETAILS
会期 | 2015年11月21日(土)~2016年3月21日(月・振) |
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会場 | 富山市ガラス美術館 Google Map |
住所 | 富山県富山市西町5番1号 |
時間 |
9:30~18:00
(最終入場時間 17:30)
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休館日 |
水曜日 ※年末年始(12月29日~2016年1月3日) |
観覧料 | 一般 800円(600円) 大学生 600円(400円) ※「ハワード・ベン・トレ:Casting of Being – 存在の痕跡」、「藤田喬平の芸術 - 『現代』としての伝統」 両展覧会共通観覧券 一般 1,300円(1,100円) 大学生 1,100円
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TEL | 076-461-3100 |
URL | http://toyama-glass-art-museum.jp/exhibition/howard/ |
富山市ガラス美術館の情報はこちらMUSEUM INFORMATION
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