この展覧会についてABOUT THIS EXHIBITION
雄大な風景、荘厳な朝焼け、楚々と咲く野の可憐な花。自然を前にしてその美しさにため息をもらすとき、私たちは人知の及ばない神秘の現れに心動かされていると同時に、その同じ空間のなかに私たち自身がいることに驚いているのかもしれません。美しさの源泉に手はまるで届きそうにないのに、その厚みのなかに自身が含まれていること、つながっていることを知ることは、私たちが生きて在るうえでの大きな悦びとなり、心安い原動力となるでしょう。
型絵染作家 釜我敏子(1938- )が染めだす着物を眺めていると、そんなことを考えさせられます。野やまちで出合う小さな草花をモチーフにしながら、釜我が型の繰り返しによって実現する連続模様は繊細でダイナミックで、私の目の前にまるで一枚の膜のように無限に広がっていきます。しかしその膜は、考え抜かれた緻密なデザインと柔らかな色彩のグラデーションによって私を遮るどころか、膨らみながら包み込んでくれるのです。いのちを受け止める懐深さと慈愛に充ちた眼差しにこそ、釜我の型絵染の美しさがあります。
「型の反復が一番難しく、一番面白い作業です」と語る釜我は、地に余白をつくらず全面を模様で埋め尽くします。一見したところ表現のヴァリエーションに乏しいように映るかもしれませんが、そこにはありとあらゆる技が試され、驚きが充ちています。自由に絵を描くのではなく、型紙を彫り、染料で染め、模様を繰り返すという制約があるからこそ出来上がった着物に、その空間の思いがけない広がりや厚み、草花の生き生きした姿に自ら声を上げて驚きもするのです。釜我にとって型絵染という技法は、世界の片隅で受けた驚きをさらなる驚きでもって世界に照らし返す方法でもあります。表現を自らの手の内におさめて世界を小さく私有するのではなく、自身の手を超えたあるがままの世界と向き合うために。
昨年、福岡県文化賞を受賞した釜我は77歳の喜寿を迎え、いまなお新たな技に挑戦しつづけています。福岡県春日市の自宅兼工房に長く住まい、愛犬とともに出かける散歩を日課にしながら、釜我の表現は始まります。繰り返される日々の営みが、まるでもう一つの自然のごとき大らかさを獲得していく開かれを、展覧会場でどうぞ体感してください。
開催概要EVENT DETAILS
会期 |
2015年11月29日(日)~2016年1月17日(日)
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会場 | 福岡県立美術館 Google Map |
住所 | 福岡県福岡市中央区天神5-2-1 |
時間 |
10:00~18:00
(最終入場時間 17:30)
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休館日 |
月曜日 ※月曜日が祝祭日の場合はその翌日 ※年末年始 ※その他臨時に休館する場合があります |
観覧料 | 一般 700円(500円) 高大生 500円(300円) 小中生 300円(200円) ※( )内は20名以上の団体割引料金
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TEL | 092-715-3551 |
URL | http://fukuoka-kenbi.jp/exhibition/2015/kenbi4844.html |
福岡県立美術館の情報はこちらMUSEUM INFORMATION
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