4.0
DIC川村記念美術館ならではの鑑賞体験
千葉県に住んでいて車で40分ほどで行ける近距離なので、DIC川村記念美術館は何回も来ています。
今回は、休館すると発表されて、これが最後になるかも知れないということで、再訪しました。西川勝人というアーティストは知らなかったので、休館の話がなければ、スルーしていたかもしれません。
でもあまり知られていないアーティストに光を当てたり、他の美術館がやらないようなテーマで攻める企画は、DIC川村記念美術館の魅力です。
都心から離れた千葉の郊外にあって、ニッチなテーマの企画展をやるので、なかなか人が多く来る訳でなく、採算が採れないのは当たり前ではあります。
経営的には確かに難点がありますが、今回の企画展も、新たな発見・出会いがあって、少なからぬ刺激をもらえる好企画でした。
西川勝人の作品は、基本的に白い彫刻や絵画です。そこに淡い陰影が表現されている程度です。ご本人も色そのものに興味はないとおっしゃっているそうです。光と闇がテーマとのこと。
最初の展示は、Gallery200という大きな窓があって、外光が降り注ぎ、外の景色が見える空間です。そこにアクリルガラスとクリスタルガラスを使った作品が展示されています。こんな展示スペースがあるからこそ実現できる表現で、他の美術館では真似できません。
圧巻なのは、後半で展示されている「ラビリンス断片」。個々の作品も配置されていますが、迷路のような空間がひとつの展示作品になっています。広い展示空間に、個々の作品がポツンポツンとリズミカルに配置されていて、巡ると吸い込まれるような感覚になります。静謐さに包まれた白い空間に身を置いて、じんわりと身体全体で感じるといった鑑賞体験です。
DIC川村記念美術館の常設展示の目玉は、ロスコルームですが、それに似た体験ができる展示空間になっています。
やっぱりこんな美術館は他にはないので、存続して欲しいと切に願います。