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アーティストによる川崎重工への抗議行動について

国立西洋美術館の『ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?』展の記者向け内覧会での、参加アーティストによる川崎重工への抗議行動について。自分は美術ファンで、かつガザにおける民間人虐殺は許しがたいと思ってるので、個人的にはどう考えればいいのか心苦しく思った。


こちらの展覧会趣旨についての座談会の記事を踏まえて、認識不足なこともあるだろうけど、まずは直後に思ったこと、考えたことを書き残しておきたい。

https://note.com/misonikomi_oden/n/n43d2994afaa6


思ったことを思いつくまま並べて書いているだけなので、以下の内容について、その立場や主張に一貫性はない。これは自問自答の文章だ。


■まず「川崎重工が国立西洋美術館のスポンサー」という報じられかたは、なにか国の施設と企業がただカネで結びついているという印象を与えるが、実態としては同企業の負担で月1回常設展の無料観覧日を提供するなど、誰もが美術にアクセスできる機会を設けるような活動をしている。https://twitter.com/NMWATokyo/status/1766615199254286728


■また“松方によるコレクションは「第一次世界大戦時の世界的な商船不足を補う商売」などによる「帝国主義下の戦争特需の利益で行われたコレクション」”であるというアーティスト側の意見には抗議したい。

https://www.timeout.jp/tokyo/ja/news/nmwa-stopgenocide-031124 戦争によって世界的に民間の物流が大変な困難な状況を迎えた時代に、それを救ったという功績もある。戦時下、戦前戦後の経済活動をなんでもかんでも断罪するというのはあまりに短絡的で行き過ぎだ。


■アート・アクティビストの表現の強度が強すぎて、他の表現者の表現を存在ごと塗りつぶしてしまう問題もある。https://twitter.com/KanjiYumisashi/status/1767179514243866672 https://twitter.com/Ajax_en_folie/status/1767249594998829103


■そしてこのような、ただそれが過去のものだからというだけで作品を軽視し、なおかつ「死体」扱いして冒涜するような皮肉は最も許しがたい。https://twitter.com/wysvoice/status/1767195649781665834

これについては冒頭の記事において、参加アーティストの鷹野氏が事前に反論している。以下引用。

鷹野は権威の否定という観点について、全てを否定して破壊しようとするのではなく、美術館が持つ権威については批評性を持ちつつも、美術館は「過去」の保管庫でもあるため現在生きる人との対話の積み重ねによって新たな未来が生まれることを忘れてはいけないと強調した。(中略)過去は再解釈することもできるし過去を裏切ることによって重んじることもできる。


齋藤恵汰氏によるこのコメントも、過去には敬意を払わねばならないし、過去に敬意を払う者(今回の場合は美術館関係者や川崎重工の関係者)への敬意も忘れてはならない、という趣旨だろう。https://twitter.com/_satoketa/status/1767074152627011765


■一方で、世間に対しても川崎重工に対しても、アーティストから抗議メッセージを届けるにはあの場でああすることが、最も効果的な方法であったろうとは思う。


■また展覧会の担当学芸員かつ西美の主任研究員である新藤氏は、冒頭記事でこう述べられている。

「この人に西洋美術館ってどう思う?って聞いてみたいと思った人に声をかけていったのが率直なとこですよ。本当のことを言えば。」

今回抗議を表明したアーティストは、それに正面から応答したかたちになる。それは、上記で鷹野氏の語られた“過去を裏切ることによって重んじる”ことにもつながるだろう。

だから、斎藤氏が言われるように、抗議にあたって展示作家を「降りる」必要もないだろうと思う。


■いずれにしても、今回の件が原因となって「やはり国立西洋美術館でコンテンポラリ・アートを扱うのは不適切だ(あるいは面倒だ)」という思惑が働いて、同様の取り組みが今後行われなくなってしまったら残念だ。そのようなことがないよう、今後の国立西洋美術館と川崎重工のアクションを期待して見守りたい。



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