ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡
奈良県立美術館|奈良県
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研究を重ねて編み出された「インディゴ抜染」の色味
ウィリアム・モリスの作品はいくつか知っているものの、実際に作品を目にするのは今回が初めてです。生涯を紐解く展示ということで、新たな発見を期待して鑑賞しました。
◆見どころ① - インディゴ抜染
今回一番印象に残ったのは「インディゴ抜染 / Indigo Discharge」という技法で染められた作品群。全体をインディゴで染めた後にブリーチを行い、絵柄のパターンに合わせて赤、黄と一色ずつ足していく、非常に手間のかかる染色技法です。モリスは当時流行していたアニリンという化学染料を嫌い、マダーやウエルド、そしてインディゴなどの天然染料を使って理想の色を表現することに成功しました。代表的な作品である「いちご泥棒」や「うさぎ兄弟」などに、この技法が使われています。やはり実物で見るこれらの作品は、本や画面で見る色合いよりも複雑で深みを感じました。
◆見どころ② - モリスに関連する写真
モリスが居住していた「レッド・ハウス」や「ケルムスコット・ハウス」の写真が、映像作品を含めて多数展示されています。この写真は織作峰子氏によるもので、花々に覆われた豊かな生活の一部を垣間見ることができます。しかし優雅で美しい写真の横には、あまり穏やかではなさそうな経歴が並べられていて、なんだか消化できない不思議な感覚に陥りました。また、作品のモデルとなったモチーフの写真も展示されているのですが、これらを見比べると、花々の特徴を捉えて細部まで描いていることがよく理解できます。
◆見どころ③ - 奈良の陶芸
1階の展示室には、一見モリスとはなんの関連性もなさそうな陶芸作品が展示されていました。これらはすべて奈良出身の富本憲吉の作品で、彼はモリスの影響を受けてイギリス留学をしていたそうです。奈良県立美術館ならではの興味深い展示でした。
◆展示について
展示の都合上、第1章の映像展示が第3章の展示の次に登場します。密集を避けるための措置らしいのですが、時系列がおかしくなるので違和感を覚えました。自然な流れで見たい方は第3展示室から見ることをおすすめします。
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落ち着いた色合いなのに華やかで目を惹く、モリスの色彩感覚はとても洗練されていると感じました。「格子垣」は白と黒の作品がありますが、これがライトモードとダークモードのカラーパレットに見えたので、今後の参考にしたいと思います。
デザイナー、建築家、カリグラファー、詩人などなど、さまざまな顔を持つモリスのほんの少ししか知らなかったんだと改めて感じる展覧会でした。
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