養老孟司と小檜山賢二の虫展
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- by Sukekiyo-Acckerman
東京都写真美術館で2026年3月21日~5月24日の会期で行われた表記展覧会のレビューです。
AAには展覧会登録がなかったのでこちらに書きます。 この後、豊田市博物館、岡山県美へと巡回します。
都写美での会期は終了しましたが、終了間際に行ってあまりの素晴らしさに感動しました。 この写真展は文句なしで2026上期のMY BESTです。 とにかく行って見たらわかります。見逃した方は豊田か岡山に出かけてください。そして見てください。
何をかというと虫の写真です。 は? それがどうしたと言わずに黙ってその写真を見てほしい。それに尽きます。
そこにはあなたのこれまで知らなかった虫の姿が大迫力で拡大されて現れます。 頭、目、口、顎、胸、腹、手、脚、触角、羽、毛、突起、皺、・・・・・ 虫の真の姿が白日の下に曝され、しかもそれがただの一点のボケやカスミや濁りもない超絶クリアな写真となっています。 しかもカラー写真です。 虫ってこんなにカラフルだったのかと、目を疑いたくなるほどの美しさ。
そう。これこそ人間の手によらない純粋に天然のアートなのです。
虫の拡大写真ってこれまでもあったじゃない。と、おっしゃるか。
チッチッチッ。違うんだなこれが。 よーく思い出してみてほしい。たとえばトンボの頭部を電子顕微鏡で拡大した写真ありましたよね。 複眼の1個1個、鋭いアゴなんかがよーくわかるやつ。 あるいは蝶の羽。鱗粉の分布が手に取るようにわかるやつ。
でもそれって、1匹の虫の一部分でしたよね。 1匹丸ごと拡大されたのって見たことあります? なかったはずです。てゆーか、そういう写真は撮れなかったんです。技術的に。
なぜならピントを全体均一に拡大できないから。 SPOT的には何十倍、何百倍にもピントバッチリで撮れる写真も、虫1匹丸ごとでは手前側と奥の方では焦点深度が異なるため 1発撮りはできないのです。
実は今でも1発撮りは不可能。 じゃあどうやってこの奇跡的な写真が撮れたのか。 要するに、何百枚何千枚ものSPOT写真を撮りまくってそれを合体させたもの。 これまでも手間暇惜しまずにやればできたかもしれないが、やる人はいなかった。 それで一生終わるから。アナログ作業の悲しさだ。
しかし、21世紀の最先端デジタル技術を用いてついにそれが可能に。 これぞ小檜山賢二博士の発明による「マイクロプレゼンス」なる技術なのです。
エラそうに講釈垂れましたが、全部当展で仕入れた受け売りですので悪しからず。 繰り返しますが、何はともあれその写真を見てください。 養老孟司博士もおっしゃってます。 「話せばわかる」なんて信じるな。と。
でも、展覧会レビューなので、もうちょっと書かせてください。
マイクロプレゼンスが実現した。じゃあ何を撮るか。ここからが小檜山博士のブラボーなとこです。
そのモデルに選ばれたのが虫なのです。 それも、小さすぎて日の目を見ない虫たち。 会場冒頭を飾るハムシの類。 ハムシなんて名前は聞いたことあるけど、どこにどうやって住んでるのか知らんし 探そうとも思わない。 そこに目を向けマイクロプレゼンスしてみたら! なんとも神々しいその姿カタチが!
地味な虫はさらに続きます。ゾウムシ、ハンミョウ、マイマイカブリ・・・・ ハンミョウの虹色に輝く背中は遠目には見えても、逃げ足早いから捕まえたことなかった。 それをドUPのスッピンでお会いできるとは。
個人的に嬉しかったのはトビケラの巣。 なんじゃそれ?との問いには、養老先生のお言葉借りると、「水中のミノムシ」。
トビケラの幼虫が水の中で石や木や草を利用して細長い巣にしたやつ。 これをマイプレしたら、なんともいろんなのがあって見事な造形だこと。
山口県岩国市の錦帯橋には「石人形」なる郷土土産があって、それがまさにトビケラの巣で 数mmの小石がくっついて人形みたいになってます。 トビケラハウスは石だけじゃなかったんですねえ。小檜山先生ありがとう。
当展で紹介される虫たちは主に甲虫。 マイプレされた写真は、さらに1~2m四方の大パネルに拡大されての展示なのでド迫力で迫り来ます。 実物大なら熊より怖いかも。
キャプションは虫の名前だけ。いたってシンプル。 これに、何科、何目、学名、生息地だのが付いてくると、美術館じゃなくて博物館での展覧会になる。 そうじゃなくて、当展はあくまで虫の姿を見ることがただ一つの目的。 だからこれでいいのだ。
長々とレビューしましたが、最後にもう一度。 とにかく見てください。
