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神奈川県立歴史博物館 特別展 相模川流域のみほとけ

 2020年11月4日、文化の日の休日明けの静かな水曜日の午前中、家内と、横浜・馬車道の神奈川県立歴史博物館で開催されている『特別展 相模川流域のみほとけ』を訪れる。旧館部分が国の重要文化財、全体でも史跡の指定を受けている博物館の石造りの建物を取り巻く街路の雰囲気は、近時供用が開始された横浜市役所新庁舎のガラスと金属の輝く高層ビルによって些か落ち着きを欠くものとなっていた。前回の訪問が既に、10年近く前の2011年春に東日本大震災による電力不足状況下で開催された『曹洞宗大本山總持寺 名宝100選』展であったことに鑑みれば、むしろ時の流れに能く抗して佇んでいるというべきであろうか。

 良い展示であった。展覧に付された名称からは、2018年に上野の国立博物館において相次いで開催された大規模で圧倒的な権威に満ちた豪奢な展覧会、『仁和寺と御室派のみほとけ』や『快慶・定慶のみほとけ』との関連をふと思ったりしたが、「県立」「歴史」「博物館」という自己規定が企画内容に視座の新奇性という素晴らしい影響を与えたのであろう、やや小さめに纏まって、所在地理的にも信仰的にも普段目にする機会の(少)ない多くの民間に大切に受け継がれてきた守護仏また秘仏を含む、静かで落ち着いた穏やかな展示であった。拙宅に近い北鎌倉・小袋谷の常楽寺は蘭渓道隆坐像を擁する正に枯れた古刹(あるいは、街外れに在る特段何の変哲もなく映る古寺)であるが、そこから西に向かって現在の茅ヶ崎・平塚・大磯辺りで相模川と出会い、同川沿いに相模国の中央を北上して津久井の山間を抜け、遠く甲斐国に至る地域・流域の仏教文化的大きさが実感できる展示であった。

 個々の展示物については、質の高い画像情報に加え、展示企画の意義説明や詳細な学術的知見を踏まえた鑑賞・評価も必要であろう。本展覧会の図録は、手頃な価格設定を含め、相当な手掛かりを提供するものとして有益である。また、入場料の高齢者割引(一般900円/人を65才以上200円/人)が本展覧会の評価・満足度を高めることも多言を要しない。

 




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