作家がコレクションすること。
そこから立ち上がるもう一つの創造行為
作家のコレクション作品と作家の作品によるコラボレーション
「植松奎二 コレクションのある風景 Creation–Connection–Collection–Conception」がBBプラザ美術館で開催

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文・赤坂志乃
張力や重力といった目に見えないものや、人と世界の関係・存在などをテーマに、彫刻やパフォーマンスなど多様な表現で国際的に活躍する美術家、植松奎二(うえまつけいじ 1947‐)。植松の作品と、彼が刺激を受けコレクションしてきた国内外の作家の作品をあわせて紹介する展覧会が、神戸市灘区のBBプラザ美術館で開催されている。植松はどのような作家の作品に惹かれたのか。一つひとつの作品に出会いと対話があり、植松の創作のエッセンスに触れることができる。
- 美術館・展覧会情報サイト アートアジェンダ 展覧会情報
- 「植松奎二 コレクションのある風景
Creation–Connection–Collection–Conception」
開催美術館:BBプラザ美術館
開催期間:2026年4月28日(火)〜7月20日(月・祝)
コレクションも創造行為

植松奎二は1947年、兵庫県神戸市生まれ。1975年の渡独を機に、ヨーロッパ各地で個展やグループ展に参加し国際的に活動してきた。1986年からドイツと日本の2拠点で制作。1988年にヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表に選出、2013年に中原悌二郎賞を受賞するなど、現代アートの第一線で活躍を続けている。その中で植松は影響を受けたり親しく交流している作家の作品を、購入や交換などを通して収集してきた。
植松にとってコレクションすることは、作品を所有することよりもその作家との出会いや関係性を持ったことが重要であり、「制作と同様に制作の延長線上に他の好きな作家の表現を身近に毎日の様に見ることで共感し、自分の思考とその作家との共有性を感じ取ることができ、またその作品を通して立ち上がるもう一つの創造行為」という。

本展では、植松が出会い日常的に対話してきたコレクションの中から、マルセル・デュシャンやヨーゼフ・ボイス、クリスト、ルネ・マグリット、村岡三郎、福岡道雄、河口龍夫、植松永次ら国内外の美術家58人の作品や資料と、これまであまり出品されることがなかった植松自身の作品を組み合わせて展示。今まで見たことのない「コレクションのある風景」が広がる。「言葉」「均衡」「見る」「張力」「螺旋」「飛ぶ・浮く」など、作品たちをつなぐキーワードを手がかりにじっくり楽しもう。
その一部を紹介しよう。
「飛ぶ・浮く」

イヴ・クラインが2階の窓から空中に身を投じた写真を掲載した一日限りの新聞『Dimanche(日曜)』。植松はこの作品をフレームに入れて20年以上スタジオの壁にかけていた。


「重力からの自由にあこがれる」という植松。アポロが月に着陸し月の石を採取した50年後の同じ日に、堀川紀夫が信濃川で採取した「地球の石」を植松宛に郵便で送ってきた作品と、植松自身の「浮く石」をテーマにした2作品を組み合わせることで、目に見えない重力や引力があらわに。
「風景」

この作品は同じ風景を、びん→自転車の車輪→バケツと視点を変えながらシャッターを切り撮影した連作。タイポロジー的表現を開拓したドイツの写真家ユニット、ベルント&ヒラ・ベッヒャーが同年に制作した作品とあわせて展示され、見ることの差異にハッとさせられる。
「村上三郎」想像力を喚起するナンセンス

植松のコレクションの中で重要な位置を占める作品の一つが、村岡三郎《負の銅貨》だ。2枚の10円玉を何カ月もひたすら擦り合わせて、図柄が次第に消え、銅貨がただの丸い銅板になってしまった作品で、村岡が植松にプレゼントしたもの。植松は、村岡三郎の作品に流れるナンセンスな思考や物事の捉え方、制作態度などに強く共感し、刺激を受けてきたという。《負の銅貨》のほかに《折れた酸素》《穴を食ったみみず》《π㎝の釘》といった想像力をかきたてる作品が出品されている。


このほか植松の関心のありかや他の作家との幅広い交流が感じられる面白い作品が数多く出品されている。
作家にとっても見る人に取ってもそこから新しい意味を見つけ出せるような創造性のある「風景」をつくろうと企画された今回の展覧会。「美術は、見てくださる方がいてやっと作品になる。つまりは、見る人も一緒に作品になる。本展覧会の作品を通じて、今まで見たことも聞いたこともない世界をみなさんと一緒に共有出来たらと思っています」と、植松氏は話している。風景の中に入り込んで自由に想像をふくらませませんか。