秋の京都は雅な源氏物語の世界へ 特別展「源氏物語 王朝のかがやき」@京都国立博物館
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- by morinousagisan

『源氏物語』をテーマとする展覧会が、京都国立博物館と東京国立博物館で開催されることになりました。平安時代に紫式部によって著された『源氏物語』は、日本文学史を代表する王朝物語です。世界で約44ヶ国語に訳された世界最古の長編小説ともいわれ1000年以上も読み継がれてきました。『源氏物語』は、日本文化の源泉の1つとして、日本美術の重要なテーマでありながら、京都国立博物館(以下、「京博」)では1975年以来約50年ぶり、東京国立博物館(以下「東博」)では初めての展覧会開催となります。京博、東博の専門の研究者の協同による『源氏物語』を多角的に考察する『源氏物語』展の決定版といえそうです。京都会場、東京会場それぞれに特徴をもたせた展示内容も楽しみです。
本ブログでは、京都会場を中心に紹介していきたいと思います。
見どころ
①『源氏物語』にかかわる美術の名品が大集結します。
②現存最古の源氏絵 国宝《源氏物語絵巻》(愛知・徳川美術館蔵、東京・五島美術館蔵)が場面を替えて全期間出品されます。
③海を渡った源氏絵が里帰りして出品されます。
ハーバード美術館/アーサー・M・サックラー美術館蔵、宮廷絵所預・土佐光信筆《源氏物語画帖》は、54帖全場面が揃う現存最古の源氏絵です。筆者も制作年も分かる重要な作品例です。
(参考)ハーバード美術館のHPで検索することが出来ます⇒◆
④国内外で分蔵され未だに全体像が分からず「幻の源氏物語絵巻」とも呼ばれる『源氏物語絵巻(盛安本)』も多数出品予定です。
『源氏物語絵巻(盛安本)』は、17世紀の江戸時代に源氏物語の全文を書写し、多数の絵を付した源氏絵で、実現していれば200巻ほどのスケールだったのでは?と考えられています。
⑤京博では「能」を中心とした展示も行います。東博では「浮世絵」に注目します。
それでは、各章ごとに見ていきましょう。
第1章 源氏物語を写す
かつて書物は人の手で書き写されて世に広まり、後の時代に伝わってきました。『源氏物語』も作者紫式部の自筆本は現存しません。紫式部の存命中(11世紀初頭)から人の手で書き写され、写し継いだ「写本」を後の世の人は手にして読んでいます。書き写す過程では、誤字や脱落、時には意図的な改変、省略などもあり、様々なバージョンの写本が存在することとなりました。国文学上重要な写本を中心に展示します。
2019年に発見された『源氏物語』の写本は、藤原定家が校訂した写本「青表紙本」で、第5巻「若紫」であることが判明し「奇跡の大発見」とニュースになりました。
京都会場だけ、2週間限定(11月3日~15日)で、鎌倉時代の歌人・藤原定家が監督して書写させた『源氏物語』の写本「定家本」の確認されている五帖すべてが、史上初めて一堂に展示されます。
- 若紫 (2019年10月発見の報道、個人蔵)
- 花散里(重文[1937年指定]、東京・前田育徳会蔵)
- 行幸 (重文[2018年指定]、文化庁蔵)
- 柏木 (重文[1937年指定]、東京・前田育徳会蔵)
- 早蕨 (重文[1937年指定]、個人蔵)
(参考)2019年「定家本」新発見を伝えるニュース記事⇒◆
第2章 源氏物語の作者 紫式部
源氏物語の作者である紫式部は、藤原道長の娘・彰子に女房として仕え、女房時代の記録『紫式部日記』を残しています。その日記は読み継がれ、多くの肖像画も描かれてきました。2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」では主人公として描かれました。歴史の中の紫式部の実像と後の世の人々に残る彼女のイメージを、文献や絵画から読み解きます。
第3章 国宝 源氏物語絵巻
『源氏物語』を描いた現存最古の作品である国宝《源氏物語絵巻》(愛知・徳川美術館ならびに東京・五島美術館蔵)は、王朝美術の象徴であり、絵巻の最高傑作の1つとされています。
煌びやかな装飾の料紙に流麗な書と繊細で理知的な絵が一体となった名画です。
京都会場では、4つの場面が各2週間ずつ全期間展示されます。
第4章 源氏物語を深める
鎌倉時代以降、『源氏物語』の本文も整えられていき、注釈書や系図も作られるようになりました。物語の理解の深まりは『源氏物語』の古典化、権威化を推し進めました。天皇を中心とする宮廷社会と文化的優越性を表すための『源氏物語』の美術、文化が生み出されました。
室町時代頃までに作られた天皇による抜書や源氏絵の名品を展示します。
《源氏物語図扇面貼交屛風》室町時代・16世紀 広島・浄土寺蔵 も楽しみです!
第5章 源氏物語でかざる
『源氏物語』は工芸品を装飾する意匠としても表されました。その意匠は、人物を描かず、特定の場面を象徴するモチーフで物語の内容を暗示する「留守模様」としても表現され、きもののデザインにも取り入れられました。
徳川家光の長女・千代姫の婚礼調度 国宝『初音の調度』に代表されるように婚礼の調度に源氏の意匠が用いられました。
(参考)国宝『初音の調度』⇒◆
京博では、『源氏物語』と関係の深い「能」に注目し、能舞台を模した展示で源氏能の世界を紹介します。「葵上」(前期)と「玉鬘」(後期)の演目を再現するように、復原能装束を用いた展示を予定しています。
第6章 源氏物語でいろどる
安土桃山時代から江戸時代にかけて作られた多くの源氏絵を紹介します。
色紙、扇面、大画面の屛風や襖に描かれ、長寿や婚礼を寿ぐ画題としても認識されていきました。
国宝《源氏物語関屋澪標屛風図》俵屋宗達筆 江戸時代・寛永8年(1631)東京・静嘉堂文庫美術館蔵(公財)静嘉堂/DNPartcom も必見!
第7章 源氏物語であそぶ
出版文化の発展に伴って『源氏物語』を享受する層も広がっていきました。
東京会場では、浮世絵にみる『源氏物語』を展示します。
終章 源氏物語を描き継ぐ
近代にはいると、画家たちは過去の源氏絵から学び、独自の解釈を加えて作品を生み出していきました。
京博では、《宇治の宮の姫君たち》松岡映丘筆 大正元年(1912)兵庫・姫路市立美術館蔵 を展示します。
上村松園筆《焔》は、東博だけの展示となります。今回も上洛しての里帰りは叶わないようです。

『源氏物語』で出会いのきっかけとなる小さな動物
籠から逃げた雀を追いかけて姿を見せた若紫(後の紫の上)を見初める光源氏。
猫が御簾をめくったことで、その内側に居た光源氏の正妻・女三の宮を垣間見て心を奪われてしまう柏木。
京博では、展示予定の重要文化財《源氏物語画帖 若紫》に描かれた雀をイラストにしたマウスポインター画像がダウンロードできます。展覧会公式サイト「スペシャル」タブをご確認ください。
音声ガイドナビゲーターは、「光る君へ」で一条天皇役を演じた俳優の塩野瑛久さんです。
『源氏物語』の現代語訳は、谷崎潤一郎や瀬戸内寂聴はじめ、調べてみるとたくさん出ています。大和和紀著『あさきゆめみし』をお読みになった方も多いでしょう。私は、徳川美術館で『はじめての源氏物語 全五十四帖のあらすじ』という冊子を買いました。個人的にお薦めは、佐藤晃子著『源氏物語 解剖図鑑』です。この秋に向けて、皆さんも予習にいかがでしょう。
【開催概要】特別展「源氏物語 王朝のかがやき」
- 会期:2026年10月6日(火)~2026年11月29日(日)
[主な展示替]前期:10月6日(火)~11月1日(日)/後期:11月3日(火・祝)~11月29日(日)
※会期中、一部の作品は上記以外にも展示替あり
- 会場:京都国立博物館 平成知新館
- 休館日:月曜日、10月13日(火)、11月24日(火)※ただし、2026年10月12日(月・祝)、11月23日(月・祝)は開館
- 開館時間:9:00~17:30(入館は17:00まで)/金曜日 9:00~20:00(入館は19:30まで)
- 観覧料:一般 2,200円(2,000円)/大学生 1,200円(1,000円)/高校生 700円(500円)※( )内は前売料金・20名以上の団体料金 ※中学生以下、障がい者手帳提示者とその介護者1名は無料(要証明)
- お問合せ:075-525-2473(テレホンサービス)
- 公式サイト:https://genjiten.jp/
- 公式SNS(X,Instagram): @genji_kagayaki
