大阪市立美術館の90年の歩みを館蔵、寄託の美術品が語ります。
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- by morinousagisan

昭和11年(1936)に開館した大阪市立美術館は、令和8年(2026)5月1日に開館90周年を迎えました。日本の公立美術館で3番目に古い美術館です。(1926年に東京都美術館(当初の名称は「東京府美術館」)、1933年に京都市美術館(当初の名称は「大礼記念京都美術館」)が開館しました))
開館後初めての大規模改修では、登録有形文化財である美術館の建物の外観はそのままに、最新の展示空間を整備した美術館として、2025年3月1日にリニューアルオープンしました。ストレスのない快適な展示空間、作品展示の美しさとユーモアもあって分かりやすいキャプションと私は常々感じています。
美術館の敷地は、第15代住友吉左衞門友純(春翠)が茶臼山の住友本邸敷地を美術館の建設を条件に大阪市に寄附し、併せて本邸の庭園(慶沢園)も大阪市に寄附しました。(友純さんは、大阪府立図書館も建物と図書購入基金を寄附しています。)

関東大震災の影響や世界恐慌の煽りを受け設立から16年を経て美術館は開館しました。美術館の開館記念展は、昭和11年5月2日から24日間の会期で開催された「改組第一回帝国美術院展(帝展)」でした。
この展覧会の出品作品の中から6点を購入して、大阪市美の最初のコレクションとなりました。その6点の内、橋本関雪筆《唐犬図》[通期]、児玉希望筆《枯野》[前期:右隻、後期:左隻]、柄本暁舟作《磁製 魚紋赤絵花瓶》[通期]が本展覧会に展示されています。しかしながらこの6点の所蔵だけでは常設展示会場の維持は難しく、館員が寺社や個人に作品の寄託を依頼して回りました。(この春の大阪市美での「妙心寺 禅の継承」開催はこの時からのご縁です)
太平洋戦争が始まり、美術館の3階講堂は、陸軍に接収され、屋上には高射砲が設置されたそうです。このような時代にあっても美術館としての活動は続けられ、昭和18年9月には「関西邦画展」が開催されました。この展覧会は、15代友純を継いだ住友吉左衞門友成が関西の日本画家20人に新作の依頼をして開催されたもので、展覧会終了後は友成さんが全点を購入して美術館へ寄贈しました。これが「住友コレクション」です。よく知られた上村松園筆《晩秋》[通期]もその中の1点です。
戦争で大阪市内は大きな被害を受けましたが、大阪市美は被弾することなくコレクションと寄託品は守られました。終戦後、美術館はGHQに接収されました。第5陳列室(現在のじゃおりうむ)はバスケットコートに改造され、展示ケースのガラスや講堂の長椅子は持ち去られたそうです。そこからまた再開に向けて動き出すことになりました。

「コレクションは美術館のアイデンティティ」
大阪市美といえば、中国美術をはじめとする東洋美術のコレクションで有名です。財界人、文化人のコレクションを譲り受けてきました。各コレクションの中から代表作品をプロローグで紹介しています。イタリア出身のドイツ系スイス人の神戸在住外国人であったウーゴ・アルフォンス・カザールの漆工芸のコレクションや、バルタザール・ウンゲルンーシュテンベルクの浮世絵などのコレクションも含まれています。また、北野恒富や島成園など作家自身やその親族などからも作品を譲渡され、日本画や洋画のコレクションも充実したものとなっていきました。
北野恒富筆《星》昭和14年(1939)大阪市立美術館 北野恒富氏寄贈[通期] も展示されています。

イタリアのピゴリーニ博物館との資料交換によってエトルリア陶器など165件を受贈してコレクションに加わりました。また、大阪市立海洋博物館「なにわの海の時空間」の閉館に伴い移管されたマラッカ海峡での沈没船からの引揚品も展示されています。

美術作品が雄弁に語ります。
美術は、物語と物事を記録して、人々に伝えてきました。多様な「物語の美術」を紹介します。

美術制作の背景にある物語を紹介します。
作品には、その作品が作られる経緯が込められています。依頼主がいて、何故この作品を制作したいのか、どうしてこの作家だったのか、依頼を受けて作家はどのような思いをもって制作したのか、更には制作時の時代背景を読み取ることも出来きます。作品が手本とした典拠も遡ることができるでしょう。来歴は作品が辿ってきた歴史も物語っています。
北野恒富筆《夜桜》は、昭和18年の「関西邦画展」に出品された恒富最晩年の作品です。戦争の足音も近づく時代に、嵐山での桜の思い出と京都の舞妓もこの時流ではいなくなるとの噂から惜別の気持ちで恒富は本作を描いたそうです。

驚きの超絶技巧
彫刻や工芸作品は、作品に至るまでの技術開発たるや、材料の入手、素材や技にあう道具の開発、技術の習得と技法の開発などなど作品が出来上がるまでの技術者(工人)の奮闘の過程「彫刻・工芸史は、技術開発のプロジェクトストーリー」を展示します。
《橋姫蒔絵硯箱》は、高蒔絵などで『源氏物語』(蓋表)と『伊勢物語』(蓋裏)の内容を描写しています。表蓋の象牙製の水車は、水銀が上方から流れ出てクルクルと回転します。水車が回っている映像も作品の横で紹介されています。この作品が持つ技はこれだけではなかったのです。

彫刻、工芸の手仕事の世界は、緻密、細密、まさに「超絶技巧!神は細に宿る」カザールコレクションに目が点になりました。

未来につなぐ研究と文化財修理
美術館の使命は作品収集と公開だけではありません。作品を研究し、未来へつなげてゆくことも大きな役割です。学芸員の研究成果と作品修復の実例を紹介します。
おりしも、泉屋博古館京都で『特別展 文化財よ、永遠に2026―次代につなぐ技とひと 住友財団文化財維持・修復事業助成の成果展示』も開催中です。また、奈良博で開催中の「神仏の山 吉野・大峯-蔵王権現に捧げた祈りと美-」では修理を終えた藤原道長筆「紺紙金字経」が展示されています。文化財修理では、現状の把握から所有者と技術者で協議を行って、作品の特徴や状態にあわせての修理の方針を決定します。どの状態まで修理するか、《色絵 牡丹文大皿》のケース、「使用されてきた痕跡は残したいが、美術館での展示に堪えうる姿にはしたい」との思いに「なるほど~そのような側面もあるのか」と気づかされました。修理の時にしか見ることが出来ない箇所(裏彩色など)や顕微鏡などでの調査など文化財の保存、修理修復のお話は興味が尽きません。文化財修理には技術者、後継者の養成や材料の調達など課題も多いと感じています。

「大阪市立東洋陶磁美術館」と「大阪市立美術館」は「大阪の宝」です。住友家に感謝しかない。
一部を除いて撮影可です。
前後期で展示替えがありますので、作品リストでご確認ください⇒◆
【開催概要】[開館90周年記念特別展]全力!名宝物語 ―大阪市美とたどる美のエピソード
- 会期:2026年4月25日(土)~2026年6月21日(日) ※会期中展示替え有り
- 前期:4月25日(土)~5月24日(日)/後期:5月26日(火)~6月21日(日)
- 会場:大阪市立美術館 (天王寺公園内)
- 開館時間:午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
- 休館日:月曜日 ※5月4日は開館
- 観覧料:一般 1,800円/高大生 1,200円 ※( )内は20名以上の団体料金
※中学生以下、90歳以上、障がい者手帳等をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料(要証明)