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秋の京都の雅な展覧会は、コロナ禍の私たちを癒してくれるでしょう。

「令和」と元号が改まり、『御即位記念 特別展 皇室の名宝』が皇室ゆかりの地である京都で開催中です。単館開催、つまり巡回はありません
※展示場は撮影禁止です。掲載写真は、主催者の許可をえて「記者内覧会」で撮影したものです。

展覧会は2章構成となっています。
3階・2階の第1章には、宮内庁三の丸尚蔵館の所蔵の作品が展示されています。
「宮内庁三の丸尚蔵館」とは、「平成元年(1989)、皇室に代々受け継がれた絵画・書・工芸品など6000点余が国に寄贈されたことを機に、平成5年(1993)、皇居東御苑内に開館した宮内庁所管の施設です。」(参照:『京都国立博物館だより 2020年10・11・12月号』)考古遺物から近現代の作品まで、約9,800点の美術品類を収蔵しています。これまで東京国立博物館では所蔵作品の展覧会を開催したことはあったそうですが、現在、宮内庁三の丸尚蔵館(以下「三の丸尚蔵館」)は、改修工事に入り、その所蔵作品が東京以外の地で初めて「京都」でまとまって展示されることになりました。所蔵品は別格の存在であることから、「国宝」「重要文化財」など国の文化財指定は受けていません。本展では、三の丸尚蔵館所蔵作品のうちでも選りすぐりの名品が展示されており、どれ一つも見逃せない展示となっています。三の丸尚蔵館の所蔵となった品々は、様々な経緯を経て皇室にもたらされたもので、来歴が物語るところもあるように思います。
格別の作品、特に興味深く拝見した作品をご紹介しながら展示室を進んでいきたいともいます。

第1章「皇室につどう書画の名品 三の丸尚蔵館の名宝」
[筆跡のもつちから]
《喪乱帖(そうらんじょう)》王羲之(搨本 (とうほん)1幅 中国・唐時代(7世紀)紙本墨書(縦簾紙)
東晋の官僚で書家である王羲之は、世界史でも「書聖」と習いました。王羲之の真筆は伝わっておらず、唐時代以後の模写や拓本が残されています。その中でもこの模本は随一だそうです。日本に伝来したのはなんと奈良時代で、聖武天皇遺愛の品として東大寺に献納されたと伝わっています。三筆や三蹟と称される日本の能書家の手本となった本模本ですが、世界的にもとても貴重なものと拝見しました。

後期には三蹟の一人 佐藤佐理(さとうすけまさ)筆《恩命帖》、藤原定家筆《更級日記》、八条宮智仁親王が和歌を認めた金箔貼の豪華でありながら瀟洒な六曲屏風《古歌屏風》が展示されます。

[絵と紡ぐ物語] 手元で左へ左へ繰っていく楽しみ、ワクワクの絵巻の世界は、日本で豊かに発展しました。

《蒙古襲来絵詞(もうこしゅうらいえことば)》2巻 鎌倉時代(13世紀)紙本着色
日本史の教科書でお目にかかったことのある「元寇」の一場面。その本物を目にする絶好の機会です。

絵巻では何と言っても
《春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)》絵:高階隆兼筆、詞書:鷹司基忠ほか筆
20巻(うち6巻を前後期で展示)付属目録:西園寺公衡筆 1巻(後期展示)
春日大社草創の由来と同社に関する霊験譚や興福寺に関連する説話の絵巻物です。制作時期や制作経緯やその由来が明確で、20巻すべてが揃っている点が凄い!平成16年から13年もの大修理事業を終えた作品です。絵巻は緻密に描かれ、色彩華麗、当時の様子を細やかに伝えています。

個人的には、濃密濃彩な岩佐又兵衛(工房)筆《小栗判官絵巻》 岩佐又兵衛が描く「豊頬長顎」少し妖しげで、異常に緻密な描写を単眼鏡でじっくり観たいところです。

[唐絵へのあこがれ] 日本は古来より大陸から多くのものを学び、日本の風土の中で消化し育み、日本独自の文化を生み出してきました。日本が憧れ、習った唐絵を紹介する展示です。
《蘿蔔蕪菁図》伝牧谿筆 2幅 中国・南宋時12~13世紀 紙本墨絵
室町時代将軍家周辺で人気のあった牧谿さん、その後茶人にも人気が出て茶掛けのためにお軸となったお品です。描いてあるのは菜っ葉とお大根、対峙すればそこの「禅」が見えてくるかも。

[近世絵画百花繚乱] 展示室が絢爛豪華です。
八条宮家を飾った屏風。公家の文化サロン、宮家の邸宅内はいかばかりであったかと思いを馳せる展示空間です。
《源氏物語図屏風》は、狩野永徳と探幽の屏風が前後期で展示され、同じ狩野派でも・・・を見比べることができる贅沢。
《糸桜図簾屏風》狩野常信筆 六曲一双 紙本金地着色
なんと雅! 第2~5扇に窓を切ってそこに簾を張ったフレームを嵌め込んだ屏風で、「御簾屏風」と呼ばれるものです。他にも例があるそうですが私は初めて見ました。簾部分にも桜が描かれて簾越しに桜を観るような趣向が凝らされ、リバーシブルだそうです。

2階最後の部屋は、若冲と応挙の花鳥の楽園です。若冲の《動植綵絵》から8幅が前後期で展示されます。しかし、なんと言っても後期展示の 伊藤若冲筆《旭日鳳凰図》細かなツブツブまで単眼鏡でじっくり観たい。

1階は、第2章 「御所をめぐる色とかたち」
江戸時代までは、天皇は京都御所にお住まいで、昭和天皇までは、即位礼は京都で行われていました。かつての京都御所での天皇や公家の日々を書や絵画、宮中装束、豪華な調度などを通して再現する展示となっています。

[即位の風景] 描かれた江戸時代の即位礼が語るもの。
唯一現在 令和の屏風 《令和度 悠紀地方・主基地方風俗和歌屏風》六曲一双 紙本著色
昨年の改元の際に描かれた「悠紀地方・主基地方風俗和歌屏風」で、令和度の悠紀地方は栃木県、主基地方は京都府です。《主基地方風俗和歌屏風》は後期展示です。

[漢に学び和をうみだす] 美しい料紙に織り成す和漢の文字が響きあいます。

[天皇の姿と風雅] 天皇は人生の多くを御所の中で過ごされました。天皇の肖像画や能書家が多い貴重な宸翰、管弦の楽しみから日々の天皇の姿をたずねます。

[王朝絵巻の舞台] 最後の展示室は、御所の一番奥、御所の女性たちが暮らした後宮のなかでも中宮や女御が暮らした「飛香舎(ひぎょうしゃ)」、その別名は「藤壺」、そう「源氏物語」の世界です。江戸時代の「飛香舎」のしつらいがよみがえります。あなたも女御・・・気分が吹き抜けるかも。

本展は事前予約制(日時指定)です。密を避けるために、スペースを取った展示となっています。鑑賞者には、人の頭越しに「ちょっとだけ見えた」ではなくゆっくり楽しめそうです。鑑賞者もお互いソーシャルディスタンスを心掛けたい。
京都も観光客が戻ってきているとはいえ、バス、電車など移動はとてもスムーズです。
是非、この秋、皇室ともゆかりの深い京都で「皇室の名宝」を楽しみましょう。

【開催概要】
会期 2020年10月10日(土)〜2020年11月23日(月・祝)※会期中、一部の作品は展示替を行います
会場 京都国立博物館
時間 9:30〜17:00(最終入場時間 16:30)
休館日 月曜日 ※ただし、11月23日(月・祝)は開館
URL https://meiho2020.jp/

プロフィール

morinousagisan
阪神間在住。京都奈良辺りまで平日に出かけています。美術はまるで素人ですが、美術館へ出かけるのが大好きです。出かけた展覧会を出来るだけレポートしたいと思っております。
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