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100番目のものがたりを紡ぐのはあなたです。

2022年2月2日ついに「大阪中之島美術館」が開館します。

それに先立ち1月28日に行われたプレス内覧会に参加してきましたのでご報告します。

昨年少しコロナが落ち着いたころ久々に国立国際美術館を訪れた時、そのお隣に巨大なブラックキューブを見上げて驚きました。そうそれはベールを脱いだ新しい美術館でした。

内覧会が近づくにつれ、新しい美術館へ足を踏み入れるワクワク感は、不安が増す日々となりました。

大阪中之島美術館の開館は、感染者が爆発するコロナ禍の大阪で厳しい状況下での出発となりました。

この美術館が辿ってきた道のように。美術館関係者の方々のお気持ちもいかばかりだったでしょう。

「大阪中之島美術館開館!」の記事にはどれも「ついに」「紆余曲折を経て」「苦節40年とか30年」などがついてくる。

1983年8月に山本發次郎氏のご遺族から佐伯祐三作品33点を含む580点の作品が大阪市に寄贈されたことが出発点です。

これを機に「大阪市制100周年(1989年)記念事業基本構想」の一つとして近代美術館(仮称)建設が発表されました。ここから現在まで40年

1990年11月近代美術館建設準備室が設置されました。ここから現在まで30年

バブル期が終焉を迎えようとし、世の中が変わっていく中で本格的な作品収集活動が始まります。

(この40年については、美術館HPの「沿革」を参照ください)

大阪中之島美術館の運営にはPFI手法が導入されています。(参照:「大阪中之島美術館の運営へのPFI手法導入について」



さて、オープニングを飾る展覧会は

「Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―」

開館までの30年は、充実したコレクション形成の時期となっていました。開館時に6000点を超える所蔵作品を有する美術館です。美術館の核とも言いうる「所蔵作品」のお披露目から始まります。6000点を超えるコレクションから代表的な400点が選ばれ、もちろん全所蔵作品にはそれぞれのものがたりがありますが、本展では”99のものがたり”を紹介しながら大阪中之島美術館に迫ります。

※”99のものがたり”は、QRコードを読み取れば作品を観ながらで読むことができます。

本来ならば5階が企画展、4階がコレクション展で、ドーンと吹き抜けの空間を5階まで上っていくことになりますが、本展は4階から始まります。(正面階段の前に立った瞬間をお楽しみに!)あれもこれもこちらの所蔵だったのかと再認識する充実のコレクションです。


大阪中之島美術館の収集方針

①    佐伯祐三を中心とする近代美術の作品と資料

②    大阪と関わりのある近代・現代美術の作品と資料

③    近代・現代美術の代表的作品と資料

④    大阪と関わりのある近代・現代デザインの作品と資料

⑤    近代・現代デザインの代表的作品と資料

 

本展は、3章構成で、1章は5節と3章は3節で構成されています。


佐伯祐三《郵便配達夫》1928年、大阪中之島美術館蔵 山本發次郎コレクション

第1章 Hello! Super Collectors

明治から1970年代までをゆるやかに時代をたどりながら、多様なジャンルの多彩な表現と大阪の地ならではのコレクションを紹介します。

第1節 コレクションの礎となった寄贈作品

美術館設立のきっかけとなった「山本發次郎コレクション」と初期に寄贈された「田中徳松コレクション」「高畠アートコレクション」から始まります。山本發次郎は「墨蹟の線に通じる魅力を佐伯の絵画に見出し」彼独自の審美眼でコレクションを形成しました。来春には「佐伯祐三展」も開催が予定されています。「高畠アートコレクション」は、佐伯と同時代をパリで過ごしたエコール・ド・パリの作品群で、パキッとしたキスリングと真珠色のパスキンの作品が並びます。

第2節 大阪と関わりのある近代・現代美術-近代絵画

大阪では画壇に強力な組織が存在しなかった反面、個性的な画家が現れ、近代日本画には女性画家が多く活躍したことにもご注目ください。

池田遙邨《雪の大阪》雪化粧をした静かな大阪の街が美しい作品です。

第3節 大阪と関わりのある近代・現代美術-写真

2019年に展覧会が巡回した女性写真家の草分けとして活躍した山沢栄子の抽象絵画のような写真や大阪のアマチュア写真グループによる写真表現に「ハッ!」とさせられるかもしれません。

第4節 大阪と関わりのある近代・現代美術-版画

版画コレクションの核となる前田藤四郎の様々な技法を駆使して生み出された版画の多彩な表現にご注目ください。

第5節 大阪と関わりのある近代・現代美術-戦後美術

この節では何といっても黒い壁に囲まれた展示室で観る吉原治良と今井俊満の作品が強烈なインパクトを放っています。黒い壁は、「具体美術協会」を結成した吉原治良が、土蔵を改装して中之島に開設した私設展示施設「グタイピナコテカ」に因んだ展示スペースとなっています。大阪中之島美術館は、吉原の作品を約800点も所蔵しており、「具体」の展覧会も予定されているようです。


吉原治良の展示、左より《作品A》1955年、《作品(White Circle on Red)》1963年、《作品》1965年、《作品》1965年

第2章 Hello! Super Stars

確かにスーパースター作家ばかり。国内外に貸し出しが多かった作品を中心に選り抜きの作品が展示されています。シュルレアリスム3作家、ダリ、エルンスト、マグリッドをはじめとして、20世紀の超有名作家25人の作品がズラリと並びます。今春展覧会の開催が決まっているモディリアーニの《髪をほどいた横たわる裸婦》は、海外作家購入第1号作品で、当時はこの裸婦像が物議を醸したことをご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。1990年代のコレクションの充実にはバブル期であったことが大きいようです。この章の作品はすべて“99のものがたり”に入っているので是非読んでほしい。


エミール・ガレ《ベルリューズ(鶴首花器)》1890年 ガラス 64.5✖Φ17.9㎝

第3章 Hello! Super Visions

約 200 点のグラフィック作品と家具作品などを一堂に展示。私が個人的に一番驚きワクワクしたのはこの第3章かもしれない。プロダクトデザインとグラフィックデザインのコラボ展示が素敵な空間となっていました。

第1節      街角の芸術

第2節      都市と複製の時代

第3節      ペルソナ/プルーラリズム

大阪中之島美術館のデザインコレクションは2012年の椅子から始まりました。家具やデザインプロダクトのコレクションに、2010年末に休館したサントリーミュージアム[天保山]から約18000点のサントリーポスターコレクションが寄託されました。

ロートレック、ミュシャ、ビアズリ・・・いつ見ても胸躍るウィーン分離派展やカッサンドルのポスターから田中一光の資料や亀倉雄策の東京オリンピックまで。それらポスターや資料と一緒に展示される近・現代の「家具」や「食器」など。アアルトなどはつい最近展覧会でお目にかかったばかりではないか。希少なオリジナル家具や倉俣史朗の家具は必見です。


倉俣史朗《ミス・ブランチ》デザイン1988年 製造1989年、後方《引き出しの家具》右から(棚)(椅子)(ソファ)1967年 大阪中之島美術館蔵

展覧会を観終えて、コレクションの充実ぶりに驚きました。どのセクションを切り取っても1つの企画展が出来上がる。「この時代に大阪という街によって作られたコレクション」と菅谷富夫館長は話されていました。充実したコレクションは、ブロックバスター展が難しい現在には大変な強みともなりそうです。

所蔵作品6000点の内選りすぐりの400点といっても、400点の展示はかなりのヴォリュームで、1点1点見逃したくない作品ばかりです。新しい美術館は他にも見どころがあり、1日ここで過ごすくらいの気持ちでお出かけください。

大阪中之島は文化ゾーンとして更に変貌していきそうです。


ヤノベケンジ《SHIP'S CAT (Muse)》2021年

開館記念 Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―

会 期:2022年2月2日(水)〜3月21日(月・祝)

会 場:大阪中之島美術館 4、5階展示室

観覧料:一般 1500円 / 大学・高校生1100円 【日時指定事前予約優先制

公式HP:https://nakka-art.jp


※掲載写真は主催者の許可を受けて撮影したものです。



プロフィール

morinousagisan
阪神間在住。京都奈良辺りまで平日に出かけています。美術はまるで素人ですが、美術館へ出かけるのが大好きです。出かけた展覧会を出来るだけレポートしたいと思っております。
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